干し柿が黒くなる理由は?

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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。

自宅で干し柿を作ると表面が黒く変色していくことがあります。干し柿づくりに慣れていない場合には「カビかな?」と心配になることもあるかと思いますが、干し柿に生じる黒ずみや黒い斑点などの多くはカビではありませんので安心してください。

見た目は悪くなりますが食べても害はありません。

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今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 干し柿が黒く変色してしまう理由は?
  • 干し柿に黒い斑点ができてしまう理由は?
  • 干し柿の変色を防ぐためには?

干し柿には大きく3種類の問題のない変色が起こります。

干し柿全体が黒く変色するのはフェノール化合物が酸化することにより光による変色が起こりやすくなるためです。ゴマ状の黒い変色が起こるのは不溶化したタンニンが鉄分と反応してタンニン鉄になるためです。ぶつけた部分が変色するのはフェノール化合物の酸化に加えて追熟が進んでしまうためです。

酸化による変色は防げますがタンニン鉄による変色は防げません。

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皮を剥いた柿が黒ずむ理由は?

半日陰に干した柿
半日陰に干した柿
日向に干した柿
日向に干した柿

家庭で作る干し柿の多くは黒ずみます。

これは干し柿にするために皮を剥かれた渋柿が「細胞構造が壊れてフェノール化合物が酵素と酸素に触れる→酸化により結合した分子が光を吸収して黒く変色する」という反応を起こすためであり強い光にあてるほどに黒ずみは強くなります。

プロの作る干し柿が日陰で干されるのはこのためです。

  1. 皮を剥くことで空気に触れる

  2. フェノール化合物が酸化する

  3. 結合した分子が光を吸収する

  4. 干し柿全体が黒く変色する

黒ずみを防ぐためにはいくつかの方法があります。

柿の硫黄燻蒸
柿の硫黄燻蒸

たとえば「硫黄燻蒸」「熱湯消毒」「日陰で干す」などです。硫黄燻蒸は硫黄化合物がフェノール化合物と結合することにより酵素反応が阻害されて変色が起こりにくくなります。煮沸消毒は酵素が失活するために変色が起こりにくくなります。日陰で干すことは光の吸収を最小限にとどめることができるために変色が起こりにくくなります。

しかし硫黄燻蒸(亜硫酸ガス)には危険を伴いますので家庭で作る干し柿の場合には熱湯消毒が推奨されています。

また多くの干し柿レシピにおいて「日向に干す」ことが推奨されているのは変色よりもカビの方が怖いためです。カビは温度と湿度が高くなると発生しやすくなりますので、干し柿を干してから10日間前後の皮膜形成期は特に重要になります。

硫黄燻蒸の難しい家庭での干し柿づくりにおいては日向に干して早く乾燥させる(皮膜を形成させる)ことが優先されます。

ゴマ状の黒い斑点ができる理由は?

ゴマ状の黒い斑点は不溶化したタンニンです。

柿の果実には黒や茶褐色の小さな斑点がたくさん入っていることがあります。これはタンニン細胞(渋みのある柿タンニンが特異的にため込まれている細胞)のタンニンが不溶化したものですので食べても問題はありません。

ゴマ状の黒い斑点は柿が甘くなっている証拠でもあります。

  1. タンニンは細胞内に貯蔵されている

  2. タンニンが不溶化して渋味が抜ける

  3. 柿内外の鉄分とタンニンが反応する

  4. タンニン鉄となり黒く変色する

この場合の変色の多くは細かな斑点になります。

しかし渋柿の品種による差異がありますので必ずしも黒い斑点ができるとは限りませんし、場合によっては細かな斑点ではなく比較的大きな粒状の斑点となることもあります。また甘柿と渋柿とでは脱渋のメカニズムが異なるともいわれています。

カビとの見間違いだけには注意が必要です。

ぶつけた部分が黒くなる理由は?

果実をぶつけると黒く変色してしまいます。

柿の収穫時に柿の実をぶつけたりしてしまうと、ぶつけた部分が黒く変色してしまうことがあります。これはぶつけた部分の細胞構造が壊れることにより貯蔵細胞に収められていたフェノール化合物が酵素と酸素に触れやすくなってしまうためです。

また追熟が進んでしまうことも原因の一つになっています。

フェノール化合物による変色には水素イオン指数pHや温度も関わっています。酸性や低温では酵素活性が遅くなることが確認されていることからも、気温が低くなってから干し柿づくりを始めることも重要なポイントであるといえます。

酸性pHに関してはアスコルビン酸(ビタミンC)を用いた方法が広がりつつありますが、今のところは機械乾燥を前提とした技術であることに加えて情報が少なすぎるために一般家庭で実施するのは現実的ではないかと思われます。

情報の入手と家庭での実践ができるようでしたら追記します。

まとめ・干し柿が黒くなる理由は?

干し柿は黒くなることがあります。

多くはフェノール化合物が酵素と酸素によって酸化した分子が光を吸収することにより起こります。そのため酵素反応を阻害する硫黄燻蒸(またはアスコルビン酸溶液への浸漬)や熱湯消毒によって変色を防ぐことにつながります。

また柿内部にできることのあるゴマ状の黒い変色は不溶化したタンニンが鉄分と反応したものです。いずれにしても健康への害はありません。