柿酢が酸っぱくない?

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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。

柿酢は有機酸によるフルーティーな香りが魅力の醸造酢です。JAS規格では「醸造酢1Lにつき、果実の搾汁を300g以上使用すること」を果実酢の定義としていますので、柿100%で作られる柿酢はとても贅沢なものといえます。

しかし思ったように酸味が強くならないこともあるはずです。

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今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 仕込んだ柿酢が酸っぱくならない。
  • 酸味が弱いような気がする。
  • 柿酢が酸っぱくならない原因を知りたい。

柿酢の酸味は酢酸によるものです。

柿酢を仕込むと柿に含まれている糖(グルコース)がアルコール発酵によってエタノールになり、エタノールは酢酸発酵によって酢酸になります。柿に含まれている糖が出発点になっているため、甘い柿を使うほどに酸味が生まれやすくなります。

柿酢が酸っぱくならない原因の多くは柿の糖度不足です。

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柿酢が酸っぱくなる仕組みは?

柿酢が酸っぱくなる仕組みは?

柿酢は酢酸発酵により酸っぱくなります。

柿酢にはアルコール発酵と酢酸発酵が利用されています。柿酢を仕込むと「①糖(グルコース)がアルコール発酵によりエタノールになる→②エタノールが酢酸発酵により酢酸になる」という工程を経てお酢になります。

柿酢を仕込むとそのためアルコール発酵がスムーズに進まなければ酢酸発酵の工程に進むことはできません。

  1. 完熟した柿を容器に詰める

  2. アルコール発酵がはじまる

  3. 酢酸発酵がはじまる

  4. 醸造酢(果実酒)になる

柿は発酵させなければ柿酢にはなりません。

柿を発酵させるポイントにはいくつかありますが、特に意識して欲しいのが「柿を洗わずに仕込むこと」です。発酵の主役となる酵母や酢酸菌は柿の表面に付着していますので、洗ってしまうと発酵が遅れることになります。

酵母果物の表面など糖分の多い場所
酢酸菌植物性の糖分の多い環境

酵母と酢酸菌は共存することの多い微生物です。

柿の表面には確実に酵母(サッカロミセス・セレビシエ)と酢酸菌(アセトバクター・アセチ)が存在していますので、よほど汚れていない限りは洗わずに仕込むことがポイントになります。洗ってしまうと発酵が遅れる可能性があります。

特にアルコール発酵の遅れは腐敗につながりやすくなります。

甘くない柿を使うと酸っぱくならない?

甘くない柿を使うと酸っぱくならない?

柿酢には甘い柿を使うことがポイントになります。

柿酢は柿の糖(グルコース)がアルコール発酵によりエタノールとなり、エタノールが酢酸発酵により酢酸になることで作られます。当然、糖が少なければ酢酸の生成量も減ることになりますので酸味の弱い柿酢になります。

反応式は以下の通りです。

  1. アルコール発酵:C6H12O6(グルコース)→2C2H5OH(エタノール)+2CO2(二酸化炭素)
  2. 酢酸発酵:C2H5OH(エタノール)+O2(酸素)→CH3COOH(酢酸)+H2O(水)

ちなみに両者の発酵では通気条件が異なります。

アルコール発酵に酸素は必要ありませんので、雑菌の混入とアルコールの蒸散を防ぐために通気を制限して培養します。一方、酢酸発酵には大量の酸素を必要としますので、通気をよくして空気に触れるように培養します。

これにより「グルコース→エタノール→酢酸」となります。

酸味の足りない柿酢になるのを防ぐには?

酸味の足りない柿酢になるのを防ぐには?

酸味の強さは糖度により変化します。

一般的に糖度が10度以上であれば、そのままお酢を作れると言われています。そのため柿は完熟してから(熟柿にしてから)仕込むことがポイントになりますし、甘柿ではなく(糖度の高い)渋柿が好まれています。

基本的にアルコール発酵が終わりに近づくタイミングで酢酸発酵がはじまります。

そのためアルコール発酵が弱い(あまりにもアルコールが感じられない)場合には砂糖などを加えて強制的に糖度を高くするという手段もあります。砂糖を加えること自体は多くのレシピで実践されていますので問題はありません。

甘くない柿で仕込んだ場合には試してみる価値はあります。

かき混ぜすぎると酸っぱくならない?

酢酸発酵はかき混ぜられるのが苦手です。

酢酸菌は空気(酸素)を好む微生物です。このことからも「良くかき混ぜて空気に触れさせれば酢酸発酵が進むだろう」と考えてしまいがちですが、酢酸発酵のフェーズでかき混ぜすぎてしまうと発酵が進まずに酸味が不十分になることがあります。

ひどい時にはお酢にならないことすらあります。

  • アルコール発酵が始まるまではよくかき混ぜる
  • アルコール発酵が始まったらかき混ぜる頻度を減らせる
  • 酢酸発酵が始まったら(極力)かき混ぜないようにする

酸っぱい臭いがしてきたら、かき混ぜる必要はありません。

しかし完全にかき混ぜるのを止めてしまうと「浮遊物(柿酢から出ている部分)にカビが生えてしまうことがある」などのリスクがあることからも、「さらしなどを使って蓋をする」「1~2カ月に1度程度はかき混ぜる」などがポイントになります。

カビや虫などを見つけた際には厚めに取り除くようにします。

まとめ・柿酢が酸っぱくない?

柿酢が酸っぱくならないのは糖度が低いためです。

柿酢は柿に含まれている糖(グルコース)がアルコール発酵によりエタノールになり、エタノールが酢酸発酵により酢酸になることで作られます。そのためはじめのグルコースが少ない場合にはどうしても酸味の弱い柿酢になってしまいます。

このことからも柿酢の原料には熟した甘い柿を使うことがポイントになります。