柿酢作りに失敗する原因は?

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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。

柿酢は柿を発酵させて作られる醸造酢(果実酢)です。柿の糖(グルコース)をアルコール発酵させたのちに酢酸発酵させることになりますので、(発酵食品の扱いに慣れていない場合には)雑菌の混入により失敗してしまうこともあります。

そこで今回は柿酢作りに失敗しないためのポイントをまとめていきます。

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今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 柿酢がうまく発酵せずに失敗したことがある。
  • 表面にカビが発生しまったことがある。
  • 酸っぱくならなかったことがある。

柿酢作りにはいくつかのポイントがあります。

柿は栄養豊富な食材ですので、初期の発酵(アルコール発酵)が遅れてしまうと雑菌の混入により腐ってしまうことがあります。そこで最も重要なポイントとなるのが「アルコール発酵を促してアルコールによる抗菌効果を得ること」になります。

アルコール発酵さえうまくいけば失敗する確率は大幅に減少します。

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柿は洗いすぎないこと

柿は洗いすぎないこと

柿の洗浄はすすぐ程度にとどめておきます。

柿酢に利用されている微生物(酵母と酢酸菌)は、果物の表面など糖の多い環境を好む微生物です。共存することの多い微生物ですので、柿の表面をきれいに洗いすぎてしまうと微生物が減少することにより発酵が遅れる可能性があります。

そのためよほどの汚れでなければすすぐ程度の洗浄で仕込んでいきます。。

酵母(サッカロミセス・セレビシエ)アルコール発酵
酢酸菌(アセトバクター・アセチ)酢酸発酵

絞り粕を利用する場合には仕込み時に注意を払います。

柿酢を搾った後の絞り粕は意外なほどに良い味です。味見をしてみると「チャツネのようにして使えるのでは?」などと考えてしまうものですが、絞りカスには土埃などの汚れが混入している可能性が高いため積極的に食べることはおすすめしません。

絞り粕の食用としての利用を考えている場合には注意が必要です。

熟柿(熟した柿)を潰して仕込むこと

熟柿(熟した柿)を潰して仕込むこと

柿は熟柿にしてから潰して仕込みます。

柿酢の仕込み方には「柿を切らずにそのまま仕込む方法」「柿を切って潰さずに仕込む方法」「柿を潰してペースト状にして仕込む方法」などがあります。柿酢作りに失敗したくない場合には、柿を潰してペースト状にして仕込む方法をおすすめします。

空気層ができないためにカビなどのリスクが大幅に減少します。

  1. 柿を熟成させてから潰します

  2. 空気層が減るために雑菌が混入しにくくなります

  3. アルコール発酵がはじまります

  4. 酢酸発酵により酢になります

また潰すことでアルコール発酵も促されます。

アルコール発酵を行う酵母(サッカロミセス・セレビシエなど)には、栄養(グルコールなど)のある環境では「酸素があると糖を消費して増殖しやすい」「酸素がないと糖を消費してアルコールを生成しやすい」という特徴があります。

そのため柿を潰して仕込むとアルコール発酵がはじまりやすくなります。

アルコール発酵が始まるまでは手を抜かない

アルコール発酵が始まるまでは手を抜かない

アルコール発酵の始まる前の柿酢は脆弱です。

柿酢は酢酸の抗菌性によって常温でも腐ることがありません。酢酸発酵の始まる前はアルコールの抗菌性によって雑菌の混入を防いでいます。しかしアルコール発酵が始まる前は何からも守られていない脆弱な状態です。

雑菌の混入によるカビや腐敗のリスクがあります。

【補足説明】糖にも腐敗防止の効果があります。しかし柿に含まれている糖は10~20%ほどであるため、食品の腐敗防止に有効な58.4%(大部分の最近の水分活性が0.90以下になる濃度)には遠く及びません。このことからもアルコール発酵の始まる前の柿酢はとても脆弱な状態であるといえます。

このことからもアルコール発酵に時間がかかると失敗しやすくなります。

美味しい柿酢を失敗することなく作るためには「アルコール発酵は強く早く終わらせること」「酢酸発酵はゆっくり静かに進めること」がポイントだとされています。これはアルコール発酵に時間がかかると腐敗しやすくなることと、酢酸発酵は振動を嫌うことが関係しています。

初めの一週間は毎日かき混ぜ、その後は気が向いた時にかき混ぜる程度に管理していきます。

アルコール発酵アルコールの殺菌作用が腐敗を防ぐ
酢酸発酵酢酸菌膜が壊れるために振動を嫌う

失敗しないためにはアルコール発酵を促すことです。

アルコール発酵さえスムーズに進めることができれば「アルコールによる殺菌作用が雑菌を防ぐ→酢酸による殺菌力作用が雑菌を防ぐ」ことにより雑菌の混入するリスク(柿酢を腐らせてしまうリスク)は大きく低下します。

そのため「アルコール発酵のフェーズでのみ20℃程度に温度管理する」「ドライイースト(粒状に加工された乾燥酵母)などを添加する」などの手段がとられることもあります。

時々かき混ぜて味を確かめる

時々かき混ぜて味を確かめる

柿酢のかき混ぜ方には理屈があります。

ポイントとなるのは「仕込みから1週間ほど(アルコール発酵が始まるまでの期間)は毎日かき混ぜること」「その後は(アルコールを感じられれば)頻度を落としても大丈夫」「酸っぱい臭いがしてきたらかき混ぜるのを止める(かき混ぜる場合には月一以下の頻度にする)」ことです。

かき混ぜる頻度は発酵の段階により変化します。

アルコール発酵の前毎日かき混ぜる
アルコール発酵中数日から一週間おきにかき混ぜる
酢酸発酵中かき混ぜない(かき混ぜたい場合は月一以下の頻度にする)

微生物には種類ごとに異なる性質があります。

アルコール発酵が始まる前は表面のカビを防ぐために毎日かき混ぜますが、アルコール発酵が始まればアルコールによる殺菌作用があるために頻度を落とせます。酢酸菌は振動を嫌う(酢酸菌膜が壊れるのを嫌う)ためにかき混ぜない方が発酵は進みやすくなります。

理屈が理解できていれば管理にも自信を持てます。

まとめ・柿酢作りに失敗する原因は?

柿酢作りは難しくありません。

しかしアルコールや酢酸による殺菌作用を得られるまでには注意が必要であり、失敗を防ぐためには「柿は洗わずに仕込む」「熟柿にしてから潰して仕込む」「アルコール発酵のフェーズでは暖かい場所に置いておく」などがポイントになります。

また酢酸発酵は振動を嫌いますのでかき混ぜるのを止めます。かき混ぜたからといって酢酸発酵が止まるわけではありませんが、かき混ぜなかった時と比べると時間がかかることになります。