干し柿はなぜ甘くなる?

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こんにちは、めしラボです。

渋柿は干し柿にすることで渋が抜けて食べられるようになります。渋抜きの方法にはアルコール脱渋などもありますが、干し柿には「甘味が増して独特の食感や風味が付与される」「保存性が高まる」などのメリットがあることからも古くから利用されています。

干し柿は渋抜き手段の一つであるとともに、古くから親しまれている柿の加工品(保存食)のひとつでもあります。

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今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 干し柿にすると渋柿の渋が抜ける理由は?
  • 渋柿の渋が抜けると甘くなる理由は?
  • 干し柿にしても渋が残ることがある理由は?

干し柿はアセトアルデヒドにより渋が抜けます。

渋柿の渋は柿タンニンによるものです。日本の柿には渋柿と甘柿に大別されますが、渋柿品種にはタンニン含有量が高いために強い渋味があります。渋柿を干し柿にすると皮を剥いたことが刺激となってアセトアルデヒドができやすくなります。

アセトアルデヒドはタンニンを固めるために脱渋になります。脱渋された渋柿は「渋が抜けて甘味を感じやすくなる」「水分が抜けて糖が濃縮される」などの理由から甘くなります。

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渋柿が渋い理由は?

柿の渋味は柿タンニンによるものです。

日本の柿は渋柿と甘柿の大きく2種類に大別されますが、渋柿品種には非常に多くのタンニンが含まれているために脱渋をしなければ生では食べられません。渋柿が生で食べられるのは果肉が半透明で液状に近くなった完熟のもの(熟柿)だけです。

また柿の分類は細かく分けると4種類になります。

  • 完全甘柿(富有など):樹上で自然に脱渋する
  • 不完全甘柿(筆柿など):種子ができると脱渋する
  • 不完全渋柿(甲州百目など):種子ができても渋味が残る
  • 完全渋柿(市田柿など):樹上では脱渋しない

基本的に渋柿には脱渋が必要です。

渋柿の渋を抜くためには、柿そのものの食感を残したい場合には「アルコール脱渋」「ドライアイス脱渋」「湯抜き法」など、干し柿にしたい(保存性を高めたい)場合には「干し柿にする(皮を剥いて乾燥させる)」などをします。

渋柿を食べるには柿タンニンの処理がポイントになります。

渋抜きの理屈は?

渋抜きにはアセトアルデヒドが利用されます。

柿タンニンはアセトアルデヒドと結合することで渋味として感じられにくくなります。そのため柿の渋を抜くためには、柿を無酸素状態にすることで果実中の代謝が変化してアルコールからアセトアルデヒドを生成させて蓄積させます。

するとアセトアルデヒドが細胞内のタンニンと結合して渋味を感じにくくなります。

  1. 何らかの方法で柿を無酸素状態にします

  2. 代謝が変化してアルコールを生成

  3. アルコールからアセトアルデヒドが生成

  4. アセトアルデヒドがタンニンと結合

また凍らせても渋抜きになります。

冷凍により渋味が抜けるメカニズムは明確には解明されていませんが、タンニン細胞が冷凍と解凍により壊れることで果肉中のペクチン(HMペクチン)などと反応して不溶化することで渋味を感じられなくなると考えられています。

仕組みとしては熟柿(果肉が半透明になるまで完熟した柿)に渋味を感じないのと同じです。

干し柿が甘くなる仕組みは?

渋柿は干し柿にすることで渋味が抜けます。

干し柿は皮を剥いた渋柿を干して作られています。渋柿は皮を剥かれることが刺激となってアセトアルデヒドが生成されやすくなりますので、アセトアルデヒドが柿タンニンと結合することで渋味を感じにくくなります。

そのため乾燥が早すぎると渋が抜けきれないこともあります。

  • 無酸素状態にする:アセトアルデヒドがタンニンと結合する
  • 完熟させる(熟柿):ペクチンがタンニンと結合する

熟度が進むことも関係しています。

果実の熟度は温度やエチレンガスによって進みやすくなりますが、干し柿を作る過程においても柿の熟度は進んでいきます。果実が熟してくるとプロトペクチンが分解してペクチンが溶け出してくるために果肉が軟らかくなっていきます。

ペクチンはタンニンと結合するために渋味が感じられにくくなります。

また干し柿は渋柿を約40日間(おおよそ20~40日間)の自然乾燥によって作られますので、当然ながら糖は濃縮されて甘くなります。あんぽ柿は乾燥歩合35%程度(水分率50%程度)、ころ柿は乾燥歩合25%程度まで乾燥させて作られています。

干し柿に濃厚な甘味があるのはこのためです。

まとめ・干し柿はなぜ甘くなる?

干し柿が甘くなるのは渋味が抜けるためです。

渋柿の渋味は柿タンニンによるものですが、柿タンニンはアセトアルデヒドやペクチンと結合すると渋味を感じられにくくなります。干し柿は皮を剥いて干すことでアセトアルデヒドが生成され、熟すことでペクチンが増えていきます。

そのためアセトアルデヒドとペクチンという二重の効果により渋味が抜けます。