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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。
鉄フライパンを使い始めると「食材がくっついてしまう」「すぐに焦げ付いてしまうので洗うのが面倒くさい」などの問題が起こることがあります。特に鉄フライパンの真ん中付近でくっついてしまう場合には油返しをしてみることをおすすめします。
油返しは鉄フライパンの熱ムラをなくすためのテクニックです。

今回の記事は次のような人におすすめ!
- 鉄フライパンの真ん中付近で食材がくっついてしまう。
- 鉄フライパンに油返しをする理由は?
- 熱ムラにより食材がくっついてしまう仕組みは?
鉄フライパンは油返しにより熱ムラをなくします。
「鉄フライパンは熱伝導率に優れている」という話を聞くこともあるかと思いますが、多くの場合それは嘘です。確かにステンレスなどと比べれば熱伝導率に優れているといえなくはありませんが、調理道具の中ではさほど良いものではありません。
鉄フライパンの真ん中がくっつきやすいのは熱伝導率が悪いためです。そのために油返しなどの熱ムラを解消するテクニックが一般化しています。
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油返しのやり方は?
鉄フライパンは油返しにより熱ムラがなくなります。
油返しとは「油を熱することで鉄フライパンを均一に温めること」です。油返しをすることにより熱ムラがなくなり、結果として食材がくっつきにくくなります。これは食材がくっつくのは温度と油切れが原因になっているためです。
以下は基本的な油返しの手順です。
鉄フライパンを薄煙が出るまで(またはSiセンサーが反応するまで)熱します。これにより吸着水(鉄に化学結合している水分)が蒸発するために油なじみが良くなります。吸着水の蒸発温度は200~250℃といわれていますのでSiセンサーを利用するのは理にかなっています。
step.1
多めの油を加えて温めます。油の量には諸説ありますが、鍋底を均一に温めることが目的になりますので数ミリ厚に広がる程度を目安にします。新しい油を使用する必要はありませんので揚げ物をした後の油などを再利用します(※油返しによる油の劣化は大きくありませんので炒め物などに利用できます)。
step.2
油を200℃前後まで温めます。200℃前後としているのは、乾式加熱である鉄フライパンの調理温度が(多くの場合)175~225℃程度になるためです。高温調理の代名詞であるチャーハンなどは250℃とされていますが家庭用のガスコンロでは難しい温度帯であるために無視しても大丈夫です。
step.3
余分な油をオイルポットなどに戻します。200℃程度まで温まっている状態ですので、調理に応じた温度帯まで冷ましてから使用します。温度が高すぎると食材によっては焦げてしまいますので注意が必要です。また焦げ付きやすい食材を調理する場合にはそのまま常温付近まで冷ましてから再加熱することにより一時的な油膜が形成されてくっつきにくくなります。
step.4
これにより鉄フライパンは均一に温まり扱いやすくなります。
ちなみにフライパンの熱ムラは素材と板厚に影響されます。鉄は(それほど)熱伝導率に優れた素材ではありませんが、厚板のものを使用することにより熱ムラができにくいために「食材がくっつきにくい」などのメリットが得られます。
そのため鉄フライパンにどうしても食材がくっついてしまう場合には「厚板の鉄フライパン(2mm以上)」や「スキレット(4mm前後)」を試してみることをおすすめします。
熱ムラによりくっつきやすくなる理由は?
鉄フライパンは温度の低い部分でくっつきやすくなります。
たとえば肉がくっつくのは「筋形質たんぱく質が熱凝固する過程で一時的に活性基が露出して金属面と張り付いてしまうため」です。そのために肉がくっつかないようにするためには「瞬時に焼き固める(熱凝固させる)」ことがポイントになります。
熱ムラがあると熱凝固に時間がかかるためにくっつきやすくなります。
油膜の形成 | 食材と金属面が直接接しないようにする |
---|---|
十分に熱する | フライパンの温度低下を少なくする |
油返し | 熱ムラ(低温部分)をなくす |
本来、鉄のフライパンはくっつきにくいフライパンです。
これは鉄フライパン(特に厚板の鉄フライパン)の熱容量が大きいためであり、食材による温度の低下が少ないために食材がくっつきにくくなります。ちなみにアルミがくっつきやすいのは温度変化が大きいためであり、ステンレスがくっつきやすいのは鉄以上に熱ムラができやすいためです。
このことからも鉄フライパンは厚板のものほどくっつきにくくなります。
熱ムラの原因は熱伝導率の悪さ?


鉄の熱伝導率は良くありません。
上の画像は鉄フライパンに小麦粉をふって火にかけたものですが、ガスコンロの火にあたっていた部分だけが熱せられて中央部分の安全センサー(Siセンサー)が当たっていた部分が温まっていないことは一目瞭然かと思います。
調理道具の説明などで「鉄は熱伝導率に優れている」という触れ込みを目にすることがあるかと思いますが、鉄の熱伝導率は銅やアルミニウムと比べると1/3以下にしかなりませんのでお世辞にも優れているとは言えません。
熱伝導率が良いといわれることがあるのは、ステンレスや陶器と比べてのことです。
熱伝導率 W/(m・K) | |
---|---|
銅 | 398.0 |
アルミニウム | 237.0 |
鉄 | 80.3 |
ステンレス SUS405 | 27.0 | 陶器 | 1.0~1.6 |
熱伝導率の悪さは食材がくっつく原因になります。
鉄フライパンには熱ムラ(ホットスポット)ができます。これは熱伝導率が悪いためであり、基本的には火に接している部分が円形状に温まり、中央部は温まりにくくなります。特にSiセンサー付きのガスコンロの場合には熱ムラが大きくなります。
そのため油切れを起こしやすくなりますし油膜も育ちにくくなります。
ちなみに、目玉焼きの中心部分がくっつきやすいのも温度を下げてしまうためです。鉄フライパンで目玉焼きを焼くとフライパンの中央部分が温まりにくいことに加えて卵黄が熱を奪いますので卵白の部分よりもくっつきやすくなります。
これらのことからも、特に家庭用ガスコンロの場合には油返しをするメリットが大きくなります。
まとめ・鉄フライパンに油返しをする理由は?
鉄フライパンは油返しによりくっつきにくくなります。
これは油返しにより鉄フライパン全体を均一に温めることができるためです。「鉄フライパンは熱伝導率に優れている」と聞くことがあるかと思いますが、多くの場合それは嘘です。鉄は熱伝導率に優れた素材ではありませんので熱ムラができると食材がくっつきやすくなります。
そのため油返しにより熱ムラをなくすテクニックが一般化しています。
※板厚はデバイヤーの場合は24cmまでが2.5mm、それ以上が3.0mmです。山田工業所の場合は1.6mm、2.3mm、3.2mmの3パターンがあります。厚板はじっくり焼きたい料理、薄板はサッと炒めたい料理に向いています。