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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。
鉄フライパンはおすすめできる調理道具です。しかし新品で購入した鉄フライパンを使い始めるためには「防錆塗装の除去」「酸化皮膜の形成」「油膜の形成(シーズニング)」などを行う必要があるために難しいと感じる方も少なくありません。
確かに使い始めの作業は面倒ですが、面倒なことをする価値は十分にあります。

今回の記事は次のような人におすすめ!
- 使い始めるためにやるべきこととは?
- 鉄フライパンの種類による使い始めの違いは?
- 新しい鉄フライパンを下す際の注意点は?
新しい鉄フライパンはそのままでは使えません。
鉄フライパンには流通時の自然酸化(赤サビ)を防ぐためにコーティングが施されています。このコーティングにはメーカーによる違いがあります。多くはクリアラッカー塗装ですが、透明シリコン焼付塗装や油、蜜蝋でコーティングされていることもあります。
また酸化皮膜や油膜を形成させる必要もあります。
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鉄フライパンを使い始めるための3工程とは?
鉄フライパンはそのままでは使えません。
多くの鉄フライパンには防錆塗装が施されているために防錆塗装を除去しなければいけませんし、高温に熱して酸化皮膜を形成させることにより油なじみが良くなります。またシーズニング(油ならし)により油膜を形成させなければ食材がくっついてしまいます。
そのため鉄フライパンの使い始めには大きく3工程が必要になります。
防錆塗装の除去 | メーカーによる違いがあり |
---|---|
酸化皮膜の形成 | 青灰色になるまで熱する |
油膜の形成 | 乾性油を酸化重合させる |
まずは防錆塗装を除去します。
次に高温に熱することで酸化皮膜を作り、最後に油を酸化重合させることにより油膜(樹脂皮膜)を形成させます。酸化皮膜は「鉄を安定させつつ微細な凹凸ができるために油なじみが良くなる」ため、油膜は「油切れを防いでくっつきにくくなる」ために作られます。
防錆塗装に関してはメーカーの取扱説明書の指示に従います。
防錆塗装の除去方法は?
鉄フライパンの防錆塗装にはいくつかの種類があります。
たとえば一般的な鉄フライパンには「クリアラッカー塗装」が施されていますし、そのまま使える防錆塗装には「透明シリコン焼付塗装」などがあります。また、塗装ではなく蜜蝋や油などが塗られた状態で販売されているものもあります。
以下のようなイメージです。
ラッカー塗装 | 空焼きにより焼き切れるタイプ |
---|---|
透明シリコン焼付塗装 | そのまま使い始めることのできるタイプ |
蜜蝋や油など | お湯などで落とせるタイプ |
基本的には取扱説明書の指示に従います。
クリアラッカー塗装をそのまま使い始めてしまうと料理が台無しになります(人体にも有害です)し、透明シリコン焼付塗装を焼き切ろうとしても焼き切れませんので除去する場合には紙やすりなどを使うことになります。
お湯で落とせる蜜蝋や油などはIHコンロの家庭に人気です。
ラッカー塗装の除去方法は?
ラッカー塗装は焼き切ってから使い始めます。
中尾アルミ製作所など多くの鉄フライパンはこのタイプです。フライパンにラッカー塗料が吹き付けられていますので、直火に当てて空焼きすることにより塗料を焼き切ります。その際、黒く刺激臭のある煙が出ますので野外や換気扇の下などで行います。
煙が出なくなるまでから焼きすればOKです。
ラッカー塗料は有害ですので注意が必要です。このタイプの鉄フライパンを焼き切ることなく使い始めてしまうと料理が台無しになりますし、人体へも悪影響になりますので必ず煙が出なくなるまで焼き切ってから使い始めます。
IHコンロの場合にはカセットコンロなどを使用します。
透明シリコン焼付塗装とは?
透明シリコン焼付塗装はそのまま使えます。
遠藤商事の鉄黒皮厚板フライパンなどはこのタイプです。防錆塗装を焼き切ることなく使い始められますので、フライパンに手間をかけたくない場合やIHコンロの家庭には人気のあるタイプの鉄フライパンになっています。
このタイプの防錆塗装は(なかなか)焼き切れません。
そのため基本的にはそのまま使い続けることをおすすめします。少しマニアックな内容にはなりますが「酸化皮膜(黒錆)を形成させるために焼き切りたい」と考えることもあるかと思いますが黒皮材の黒色は黒錆(四酸化三鉄)の色ですので問題はありません。
そのまま使い始めることをおすすめします。
蜜蝋や油の除去方法は?
油や蜜蝋はお湯をかけてから洗剤で洗います。
デバイヤーのミネラルビーや(実店舗などで)防錆塗装なしとして販売されている鉄フライパンはこのタイプになります。塗装なしの鉄フライパンに油や蜜蝋が塗られているだけですので、お湯をかけてから食器洗い洗剤で洗えば落ちます。
IHコンロの家庭には人気のあるタイプです。
しかし少し割高になる傾向がありますので、ガスコンロやIHコンロであってもカセットコンロをお持ちであればクリアラッカー塗装の鉄フライパンでも問題はありません。(※デバイヤーの場合は5110がクリアラッカーで5610が蜜蝋です)
個人的には割高のデバイヤー5110(ミネラルビー)ではなく5610を購入しておけばよかったと思っています。
酸化皮膜を形成するには?
酸化皮膜は高温に熱することで形成されます。
鉄フライパンに生じる酸化物には鉄を腐食させる赤錆(酸化第二鉄)と鉄を安定させる黒錆(四酸化三鉄)があります。赤錆は鉄をボロボロにしてしまいますが、黒錆は鉄を赤錆から防ぎ(表面に凹凸ができることからも)油膜を形成させやすくなります。
しかし酸化皮膜の形成には青灰色になるまで熱する必要があります。
青灰色の酸化皮膜である四酸化三鉄(Fe3O4)の形成温度は585℃といわれており、これは鉄が鈍く輝きだす温度になります。そのためカセットコンロなどを利用する台所での作業には限界があります。
危険を伴いますので必ずしも完璧に行う必要はありません。
油膜を形成するには?
油膜は油を酸化させて形成させます。
油の酸化物である油膜(樹脂皮膜)を形成させておくことにより「サビにくくなる」「食材がくっつきにくくなる」などのメリットが得られます。赤錆は酸化皮膜(黒錆)によっても防がれていますが酸化皮膜には無数のピンホール(小さな穴)が開いていますので完全には防げません。
そのため油を塗っておくか油膜を形成させておくことで赤錆による腐食を防ぎます。
酸化皮膜の形成には油(おすすめはヒマワリ油などの乾性油)を酸化重合させる必要がありますので「熱したフライパンに薄く塗りのばして乾燥させる」「薄く塗ってからオーブンで焼く」「くず野菜を炒める」などの方法がとられています。
きれいな油膜ができるのは薄く塗りのばして自然乾燥させる(またはオーブンで乾燥させる)方法ですが、手軽で効果が高いのはくず野菜を炒める方法です。
個人的にはくず野菜を炒めることが多いです。
まとめ・鉄フライパンの使い始めは?
新しい鉄フライパンはそのままでは使えません。
鉄フライパンには流通時の自然酸化を防ぐための防錆塗装などが施されていますし、酸化皮膜(四酸化三鉄)や油膜(樹脂皮膜)を形成させておかなければ「赤錆が生じてしまうことがある」「食材がくっつきやすくなってしまう」などのリスクが高くなります。
そのため鉄フライパンを使い始めるためには「防錆塗装の除去」「酸化皮膜の形成」「油膜の形成」という3工程が欠かせないものになります。
※板厚はデバイヤーの場合は24cmまでが2.5mm、それ以上が3.0mmです。山田工業所の場合は1.6mm、2.3mm、3.2mmの3パターンがあります。厚板はじっくり焼きたい料理、薄板はサッと炒めたい料理に向いています。